手球の中心を水平に撞き出した場合、手球はその「重心位置」を撞き出されるため、しばらくは台のラシャの上を「無回転で横滑り」をし、やがてラシャとの摩擦のため、前進回転に変わっていくのである。
ボールが台の上を自然に転がれば、球が1回転して前進する距離は、円周の長さと同じである。この転がり方を「完全回転」という。
手球の下を撞き出すと、手球は逆回転をしながら押し出され、ラシャとの摩擦により、徐々に逆回転が失われ、やがては一瞬の無回転(横滑り)状態の後、前進回転に移ってしまう。(
中心よりわずかに上の撞点程度では、「横滑り」と「完全回転(前進回転)」の中間的な動きを見せた後、摩擦で前進回転へと移行する。さらに上の撞点になってくるとショット直後からすぐに完全回転で発射されるようになる。しかしどんなに上の撞点を用いても「フォロースピン」させながら手球を発射することはできない。単に「勢い良く転がって発射される」だけである。
実はこの「上の撞点」での手球の前進回転の様子については私自身長年の間次のように誤解していた。
また、手球の上を撞くと丁度自動車が急発進するときにタイヤが空回りするようなアクションを起こし、手球はラシャを摩擦で蹴りながら前進し、その勢いが失われた後は、普通の完全回転状態に移行する。
実際、経験豊富なプレーヤーであっても上の撞点で手球がフォロースピンをともなって発射されていると信じていた者は多い。肉眼で確認するのは極めて困難か、ほとんど不可能だからだ。それが最近の実験によって「平撞きのショットではどんな撞点を用いても手球には完全回転以上は与えられない」ということが確認されたのである。
球の前進距離と円周が等しい前進の仕方を「完全回転」といい、空回りをともないながら(前後とも)進んでいる状態を「不完全回転」という。
手球は白いため、図11の各状態を観察しにくいが、例えば、15番のような帯球を撞いてみるとよく分かる。図11-Bなどは特に、「逆回転→無回転→順回転」の全てを観察できるので、一度やってみると面白いと思う。
但し、前半のページで述べた通り、普通のビリヤード場では、的球を撞くことは禁止事項である。その店のスタッフに「手球の回転する様子を観察するため」だと練習目的としての合理的な理由を説明すれば分かってもらえると思う。(的球を撞く練習をした後はおしぼりなどで的球についたチョークの汚れを拭いておけば、理想的なマナーだが)
さて、fig124-A〜Cのいずれの場合も、的球に100%の厚みで(つまり直線的配置で)当たった場合、
(1)手球が無回転状態なら、手球は停止する。(ストップショット)
(2)手球が逆回転状態なら、的球との衝突後、手球は戻る。(ドローショット)
(3)手球が前進回転していれば、手球は的球に当たったあと、的球を追うように前に出る。(フォローショット)
(1)は、これまでの説明の前提となる状態である。ビリヤードのボールの動きを理解するには、まず最初に、手球が無回転であることを基本に理解する。
この(1)のアクションは、これまでの説明の繰り返しであり、単純にベクトルが分割されたものである。
(2)でも、(1)のアクションが一旦起こっている。そして、その後、停止した手球は、その場で、逆回転をしているのだ。その逆回転がラシャとの摩擦により、手球を逆方向に動かすという現象をもたらす。
(3)も同様に、一旦は(1)のアクションを経ている。手球は一旦(一瞬)停止し、その場で「前向きの回転」がラシャとの摩擦を発生させ、それにより、手球は、あらためて前進をしはじめるのである。
ストップ、ドロー、フォローは、手球と的球が衝突した瞬間の手球の回転状態が肝心なのである。つまり、撞きだしの瞬間、手球の下を撞いていたとしても、手球は「逆回転」「無回転」「順(前進)回転」の全てを行うため、的球までの距離や撞き出しの具合によっては、ドローにも、ストップにも、フォローにもなることがある。
ストップショットを撞きたい時でも、手球と的球の距離により、中心を撞くときもあれば、下を撞かなければストップしないこともある。
「中心をつけば止まる」「下を撞けば戻る」というふうに単純に考えていると、予想に反した結果となることがある。
「ストップショット」、「ドローショット(引き球)」、「フォローショット(押し球)」という名称は、的球にヒットしたあとの、手球のアクションの名称であり、「どこを撞くか」という区別ではない。
厚み100%の直線的配置で、それぞれのショットを定義すると、次のようになる。
ストップショット:
1、手球の中心(重心位置)を深く撞き出すことにより、ラシャの上を滑らせ、無回転のまま、的球にヒットさせることで、ヒットしたその場に停止させるショット。
2、手球の下を撞き、逆回転を与えながら前進させるが、その逆回転がラシャとの摩擦により、的球にヒットするとき、丁度、消えているように調整されたショットで、手球は、的球にヒットしたその場で停止する。
ドローショット(引き球):
手球の下を撞き、的球にヒットした瞬間も、その逆回転が残っているように、十分な逆回転を与え、的球にヒットした後に、残った逆回転とラシャとの摩擦で、逆進のアクションを起こさせるショット。
フォローショット(押し球):
1、手球の上を撞けば必然的に手球は前進回転を伴って的球にヒットする。ヒットした瞬間、手球は中心撞点を撞いたときと全く同じ反応をするが、与えられた前進回転がその場でラシャと摩擦を生じて、それにより前進のアクションを起こすショットが一般的な「上の撞点によるフォロー」である。
2、手球の中心(重心位置)を撞き、一旦は横滑りの状態で押し出すが、的球にヒットするまでに、ラシャとの摩擦により、前進回転(完全回転)に変化するように加減し、的球にヒットした後、ゆるやかに前進させるショットもある。
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